医科と歯科の連携について

ホスピタリティマネジメント理論では、「医療従事者(医療関係者) がホストであり、患者がゲストである」という捉え方をします。しかし、医科と歯科の関係になると、「どちらがホストか」というよりも、「患者というゲストのQOL (患者の人生や幸せ) 向上のために、どちらがホスト機能を担うか」という視点が大切ですね!
現在のエビデンスを見る限り、①口腔機能の低下、②歯周病、③咀嚼機能の低下、④口腔内細菌叢の変化等が、「糖尿病」「認知症」「誤嚥性肺炎」「心血管疾患」「フレイル」などに影響することが報告されています。
この意味では、伊藤裕教授 (慶應大学医学部腎臓内分泌代謝内科) が提唱する「ドミノ理論」は、歯学 → 医学への因果連鎖を説明する理論として大きな意義を有しています。したがって、「医科と歯科の連携」という表現はおのずと対等な関係を示していますが、実際の疾病発症プロセスを考えると、「歯科から医科への連携」、あるいは「口腔から全身への連携」と表現した方が実態により近いと言えるかもしれません。
ただし理論的には、さらに一歩進めて考えることも必要です。ホスピタリティマネジメント理論の視点から捉えると、医科と歯科は主従関係ではなく、「患者のQOL (患者の人生と幸せ) 向上という共通の目的を持つ共同ホスト」と捉えられます。すなわち、①歯科は口腔の専門ホスト、②医科は全身の専門ホストであり、両者が共働して、「患者というゲストのQOL (人生や幸せ) を支え高める関係にある。」と考えられます。
しかし、患者との最初の接点や課題によっては、①歯科が主導するケース、②医科が主導するケースが考えられます。ドミノ理論が示しているのは、「歯科が主導するケースの理論的根拠」です。
ホスピタリティマネジメント理論(参考文献[2])では、「医科・歯科連携」から「患者QOL主導型医療」への転換を打ち出しています。そこでは、①医科中心でもない、②歯科中心でもない、中心にあるのは患者のQOL (人生や幸せ) 向上という目的そのものです。理論的には円卓発想 (Round-table thinking) による医療で説明しています。昨年、国会の厚生労働部会においても取り上げられました。
そのように考えると、「医科と歯科のどちらが主導するか」という問いは、「患者のQOL (患者の人生と幸せ) の向上のために、現時点でどちらがホスト機能を主導するのが最適か」という問いになります。この問いは、私が提唱している「活私利他」、または「happy・happyの関係」にも通じています。
この論稿においては、「歯科・医科連携」→「歯科・医科共働」→「患者QOL (患者の人生と幸せ) の共創」という概念表現の整理が可能になります。
以上のことを学術的に整理するならば、「ドミノ理論」と「ホスピタリティマネジメント理論」を関係づけて、『患者QOL (患者の人生と幸せ) 共創モデル』 として社会に打ち出すことだと考えています。これはホスピタリティ経営学やホスピタリティマネジメント理論の研究においては、かなり独創的な視座の一つであります。
参考文献
[1]吉原 敬典編著(2020)『ホスピタリティマネジメント が介護を変える–サービス偏重から双方向の関わり合いへ–』ミネルヴァ書房。
[2]吉原敬典著(2016)『医療経営におけるホスピタリティ価値–経営学の視点から医師と患者の関係を問い直す–』白桃書房。
[3]吉原敬典編著(2014)『ホスピタリティマネジメント–活私利他の理論と事例研究–』白桃書房。
[4] Keisuke Yoshihara and Kozo Takase(2013),Correlation between doctor’s belief on the patient’s self-determination and medical outcomes in obtaining informed consent, Journal of Medical and Dental Sciences, 60(1) ,Tokyo Medical and Dental University, pp. 23-40.
[5] 吉原敬典著(2021)「ホスピタリティマネジメントと病院組織マネジメント」『病院』12月号、第80巻第12号、医学書院。





